2020年10月のことば

働きづめに働いている心臓 ほら、いまも

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 気付いていないところで働いてくれている。私の身体の中で意識的に動かそうと思わなくても心臓は休まず動いてくれています。動いてくれ、頼むよ。なんて意識する事もありません。眼に見えているものは簡単に意識することが出来ますが、見えないものを意識すると言うことはなかなか出来ません。
 私は「警察24時」とか名前のついた番組が大好きで極力見るようにしています。繁華街で泥酔している人、喧嘩している人、いろんな人間模様が見られて好きなんです。お酒を飲むとこんなにも人が変わってしまうのか自分もそうなっていないかちょっと心配になることもあります。お酒は飲んでも飲まれるなとよく言われますがこれがなかなか難しい。
 さて、現代社会は24時間誰かが活動しています。私が寝ている間も誰かが働いています。警察官も二十四時間体制で市民の安全を守ってくれています。鉄道の保線作業は電車の走っていない夜間に、電気水道などのライフラインは常に動いているのでだけかが働いている。見えないところでつねに誰かが働いてくれている。私の目に見えないところで誰かが私のために働いてくれている。
 私たちは、眼にみえてこないもの、意識していないものに対して価値を見いだす事はできません。知らないのですから当然でしょう。私たちはそれぞれに物差しを持ち、それにより自分の都合や価値を判断します。物差しに合わないものは否定したり拒否したり遠ざけたりしていないでしょうか。認識していないものには無関心であり、無責任と言えるでしょう。
 金子みすゞさんの「大漁」という詩があります。
 朝焼け小焼けだ大漁だ
 大羽鰯のたいりょうだ。
 浜は祭りのようだけど
 海のなかでは何万の
 鰯のとむらいするだろう。
全てのいのちの立場で物事を捉える視点と、そう見ることの大切さ。そう見ることの出来る心があるだろうか。全てのいのちを我がいのちとして見つめる心が、私の中で否定や拒否、遠ざける対象になっていないだろうか。大漁だけれど海の中では多くの弔いが行われているなんて視点には立っていませんでした。また、「星とたんぽぽ」という詩は、
 青いお空の底ふかく、
 海の小石のそのように、
 夜がくるまで沈んでる、
 昼のお星は眼にみえぬ。
 見えぬけれどもあるんだよ、
 見えぬものでもあるんだよ。 
 散ってすがれたたんぽぽの、
 瓦のすきに、だァまって、
 春のくるまでかくれてる、
 つよいその根は眼にみえぬ。
 見えぬけれどもあるんだよ、
 見えぬものでもあるんだよ。
みえないところで働きつづけてくれている星は昼間もそこに輝き続けているのに見えていない。見えないけれども確かにあることに気付かなければなりません。みえてこないものには無関心な私だから。
相田みつをさんも
 土の中の水道管
 高いビルの下の下水
 大事なものは表に出ない
心臓も、血液運ぶ動脈も見えないけれどずっと働いてくれているんですよね。
見えぬけれどもあるんだよ。見えぬものでもあるんだよ。
     なんまんだぶ
今月のことばについて

「今月のことば」の挿絵とタイトルは、株式会社探究社および株式会社法蔵館で発行している
「ほのぼのカレンダー」から引用させていただいております。

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