2013年3月

 

 

 今年の冬は平年より寒い冬だった。もうすぐ三月が来ようというのに最高気温が

氷点下だという。しかし、長い北海道の冬も三月の声を聞くと春の気配が少しずつ

感じられるようになってくる。ウインタースポーツから夏場のスポーツへと移り変
 
わってくる。最近は身体を動かす機会が少なくなっているが、私は年に数回ゴルフ
 
をします。会館の裏には手作りの練習場もあります。しかし、手に入れた事でその
 
先を求めない、有ると安心してしまう性分のためほとんど練習をしたことがないの
 
であります。今年こそはしっかりと練習をして、明るく楽しく元気よくゴルフ場へ
 
通いたいものです。さて、ゴルフはクラブでボールを叩いて遠くに飛ばし、より少
 
ない回数でカップにボールを入れる競技ですが、力いっぱい叩けば遠くに飛ぶとい
 
うものでもありません。思いっきり力を込めてフルスイングをして出来るだけと奥
 
へ飛ばしてやろうという時は見事に失敗します。じつに気分よく遠くに飛んだなと
 
いう時は、身体に全然りきみがない時であります。気負うことなく、平常心でスイ
 
ングできれば良いのですが、飛ばないよりは飛んだ方が良い。飛ぶことは素晴らし
 
いことだと思えば思う程。「きばり心」に捕われてしまいます。そしてゴルフが終
 
わった後に、どうしてどうしてと反省ばかりをするのであります。理屈はわかって
 
いるのにであります。思いっきり叩いてより遠くへ飛ばす事が大切なのか、気負わ
 
ずに平常心でまずスイングする事が大切なのか、私たちは日常生活において常に比
 
較検討をし取捨選択をしています。これとそれとではどちらがとくだろうか。こっ
 
ちはやめてそっちにしよう。これの繰り返しであります。その判断の基準になって
 
いるのは『私の都合』です。私の都合にかなうものの方が価値があるのであります。
 
それは私の欲望の色眼鏡で物事を見、優劣をつけているという事であります。現代
 
社会の価値観ひいては私の価値観でいうと、病気より健康の方が価値が高いのであ
 
ります。早死により長生きが良いのであります。健康で長生きが最も優れているの
 
であります。病気で早死には最も価値が低いのであります。この優劣の基準に基づ
 
き、それが価値のあることだと見える色眼鏡を掛けて生きている限り、それを保と
 
う目指そうとするのであります。それがかなわない状態になった時でも最期まで頑
 
張ろうとするのであります。あとひと月しか生きられないとなった時、私はしなけ
 
ればならないことがたくさん次から次へと山積みになるでありましょう。住職の引
 
継事務をしておかなければとか、保育所の経営の引継をしておかなければとか。た
 
いした事をしていない私ですらあれやこれやと思ってしまいますが、今まで大きな
 
影響力のある人が突然亡くなっても、世の中が大混乱をし人類が滅亡に至ったとい
 
うことはありません。生まれてきたものは必ず死んでいく。形あるものは必ず滅ん
 
でいく。そんな因果の道理の中で生かされている私であることに出遇わせていただ
 
いた時に、欲望の色眼鏡で見ていたこの迷いの世界から、俺がしなければ、俺でな
 
ければという「きばり心」が消え失せ、優劣の色眼鏡からも解放された安らぎの世
 
界へと変わってくるのでありましょう。     
 
     なんまんだぶ
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