2018年11月のことば

「モノ」のいのちを いとおしむ心

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 今月の法語『「モノ」のいのちをいとおしむ心』を読んで思ったのですが「愛おしむ(いとおしむ)」と似た言葉で「愛しむ(いつくしむ)または慈しむ」という言葉があるけれど、これって同じ意味なんだろうかと。辞書をひくとどちらも〈大切にする〉といったような意味があります。そこで〈いとおしむ〉と〈いつくしむ〉の違いを私の日常から考えてみた。私の趣味は何だろうと考えた時になかなか答えが見つからないが、あえて言うならば車好きではあるだろう。仕事で使う車とは別に個人的に所有もしている。ほんとは新車で所有したいけれど新車は高いので中古車、それも破格の安さの年代物の車です。年式が古いのでボディーの艶も落ちている。手入れをして輝きを取り戻そうといろいろ試しながら磨けば綺麗になる。手をかければかけただけどんどん愛着がわいてくる。愛着がわけば手元においておきたい。手放したくなくなる。その車を大切にする心が生まれてくる。新車登録されてからもう二十年近く経っているのにエンジンの調子はいいし、先日は足回りの部品も交換した。するとまるで新車の時のように路面状態を感じられるようにもなった。まぁ新車の時の状態は知らないのだがこんな感じだったんじゃないだろうかと勝手に思った。冬がくるので新しい冬用のタイヤをインターネットで購入した。純正のアルミホイルがついて国産のスタッドレスが安く買えた。お得感いっぱいで大満足である。いろいろ手をかければかけるほど愛着がわき、その分執着も深まってくる。ここまでは「いつくしむ」も「いとおしむ」にも共通の意味でしたが「いとおしむ」には「かわいそう」「ふびんに思う」といった意味もあるんだそうです。例えば11月になり朝晩めっきり寒くなってきました。木々の紅葉も終わり、木枯らしの寒い冬がもうすぐやってきます。木々も春には枝に葉が芽を出し、木々を緑色に輝かせた新緑の時期があり、夏には木陰を作り、秋には綺麗な紅葉を見せてくれます。そして、落ち葉となりやがて朽ちて形を変えていきます。形あるものもやがては形を変えていく。それは私の思いのままにはならない世界であります。平家物語の『生者必滅会者定離』(命あるものは必ず滅びる、出会いには必ず別れがある)そのままですね。諸行無常の中を生きているんですね。いつまでも鮮やかな紅葉を見せていて欲しいと思っても続きはしない。夏の陽射しから逃れた木陰も過ごしやすい秋になれば木陰は寒ささえ感じてしまう事もあります。そうなると木陰も恋しくはない。あれだけ夏に涼んでいた木陰も必要ではなくなる。季節の移ろいのなかで求められる役割も移り変わって行く。春から冬へと命の輝きを見せていた木々の葉っぱも形を変え、やがて消えて行く。同じように私が手に入れた車もやがては壊れて乗れなくなる。いま出遇っているものがいつまでも有るものでは無いし、必ず変わって行くものであるという道理を受け入れ、いつくしむだけだはなく、「モノ」のいのちをいとおしむ心を大切にしたい。忘れないようにしたい。そして常に「いとおしむ心」を持ちたい。 
     なんまんだぶ
 
今月のことばについて

「今月のことば」の挿絵とタイトルは、株式会社探究社および株式会社法蔵館で発行している
「ほのぼのカレンダー」から引用させていただいております。

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