私の育った街は人口4万人まではいない小さな市です。街には映画館がありませんでした。
中学生の時だったか高校生になっていたか、市民会館でさだまさし主演の映画を観に行った
事を憶えている。この映画の主題歌が「道化師のソネット」という曲だった。さだまさしの
歌が好きな友人に誘われて観に行ったのではなかっただろうか。この原稿を書くためにイン
ターネットで調べてみたら映画のタイトルは「翔べイカロスの翼」といい、実在の道化師の
方がモデルとなったものだった。たしかにさだまさしが主演の道化師を演じていたのは憶え
ている。こんな書き方をしてはおこがましいが、さだまさしの歌の歌詞はいつ読んでもさす
がだなと思ってしまう。詩の味わいは自分自身の年齢や環境の変化によっても変わってくる
けれど年をとれば年をとったなりの味わいの中で良いなと感じる。良いものはいつ味わって
も良いものなのだろう。
「主人公」という曲の中には、自分の歩んできた人生を振り返りながら決して後悔をしな
い人生、自分の人生の中では誰も変わる事の出来ない主人公を精一杯生きているんだと歌っ
ています。
そうでなきゃ
あなたにとても
とても はずかしいから
あなたは教えてくれた
小さな物語でも
自分の人生の中では
誰もがみな主人公
時折思い出の中で
あなたは支えてください
私の人生の中では
私が主人公だと
『主人公』より
さだまさしの詩の中には一人の人間がしっかりと主人公として描かれている。その人の素晴
らしさが実に見事に表現されていると思う。その描かれている人物は特別な人物ではなくご
くごく自然に私のまわりにいそうな人だったりする。何気ない日々の暮らしの中にあって、
私の人生をまわりの人に支えられながら光り輝くんだけれど、私の人生は私以外の誰も変わ
る事の出来ない人生であり、輝かせれるのも輝かないのも自分次第なんだと気付かせてくれ
る。自分の責任で自分の人生を充実したものにしていく、光いっぱいの自分になっていく、
光り輝く私は主人公であり、私自身の責任者なんですね。しかし、私の日暮しをみつめてみ
るとこんな私を支えてくだる多くの方々がいてくださっている。そんなお陰で生かさせてい
ただいている。そう気付かせていただくなら光いっぱいの私になって行く責任が私にはあり
ますよね。人口4万足らずの街に育ち高校を卒業し、今は北海道に暮らす私の人生の主人公
は確かに私であり私以外の誰でもない。時折思い出の中であなたは支えてくれる。支えてく
れるあなたに自分自身の責任者として「ありがとう」と言おう。
なんまんだぶ
今月のことばについて
「今月のことば」の挿絵とタイトルは、株式会社探究社および株式会社法蔵館で発行している
「ほのぼのカレンダー」から引用させていただいております。