2012年06月のことば

悲しみを通さないと見えてこない世界がある

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 先月、先々月と私の事を書かせていただいたところ「何だお前も飲んべだな」と思われた方も多かったようです。お坊さんは聖人君子だなんて事は無いのであります。しかしもうこれ以上書くのは止めておきます。さて、『悲しみを通さないと見えてこない世界がある」日々一生懸命生きているといろんな出来事に出くわします。最近新車を買った事がありません。なぜなら友達の車屋さんと仲良くしていると出物に出くわします。新車登録から13年以上経った車を1年以上所有して廃車を条件に下取りに入れればエコカー補助金を15万円上乗せする制度が以前ありました。私の友人がエコカーを購入するお客さんから下取ってきていたレンジローバー(イギリス製の車で新車ならたいそうお高い車)を前の所有者さんに断って上乗せの補助金分で譲ってもらいました。持つべきものは友達?それとも訳の分からない補助金制度?いずれにせよお陰を被りました。また、それからしばらくして乗る人がいなくなった車をいただいてきました。これまた外車、スウェーデン製のボルボのワゴン車です。昔からボルボワゴンに乗ってみたかったという夢がふってわいたようにかなったりもしました。どちらの車も新車なら絶対に乗れない車です。いやいや自分にとって楽しい都合のいい事が続くと冷静に物事が見えなくなってきたりする事があります。人生たのしい事ばかりでいいんだろうか。人生順風満帆な時に突然自身がおかれている環境が激変した時に絶望のどん底にたたき落とされたりすると、何をどうすればいいのかわからなくなり、しばらく考える事も出来ない状態になるものでしょう。ある日突然の交通事故で最愛の家族を亡くした。治療が困難な病を患い生きられる時間の限りを告げられた。避け難い事実に向き合わなければならない状態になった時の絶望感は、我が人生は思うがままに過ごしていけると思っている人においては、その悲嘆は計り知れないでしょう。たまたまその状況になっていないから、たまたまそういったご縁が整っていないかったから見ようとしてこなかった世界、見えてこなかった世界があるのでしょう。「四苦八苦」の人生、「独生独死独去独来」の人生であります。四苦とは、生・老・病・死であります。最愛の人を亡くした悲しみに暮れながら生き続ける苦しみ、年を重ねていく中でだんだんと思うように物事が出来なくなってくる、何でもかんでもすぐ忘れるようになってくる事を受け入れたくないという苦しみ、病を患い 体力も無くなり痛み苦しみばかりの毎日、好きな事ができなくなる苦しみ、いよいよ死のご縁が整って死んでいかなければならない時にその死を遠ざける事、避ける事だけに一生懸命になり死を受け入れられない苦しみ。仏教は決して死んでからの幸せを面倒みる教えではありません。今この娑婆世界においてどのように生きていくかの教えであります。悲しみに出遇う度に、なるほど「人生は四苦八苦の連続だな」「独り生れ、独り死に、独り去り、独り来たる」んだなと悲しい辛い出来事に出遇った時にそれを超えていける力になる教えが仏教であります。物事をありのままに見る事が出来るようにお育ていただくのであります。なるほど逃れ難い四苦をもち、誰もかわる事の出来ない私の人生を歩まなければならないんだ。その足元をきちんと照らしていてくださった。教えてくださっていたと見えてくる世界を説かれていたんだなぁ。   なんまんだぶ

今月のことばについて

「今月のことば」の挿絵とタイトルは、株式会社探究社および株式会社法蔵館で発行している
「ほのぼのカレンダー」から引用させていただいております。

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