もう十年以上も前ですがインドのコルカタへ行ったことがあります。お釈迦様の仏跡巡拝の旅の最後に訪れた街です。街の中の広い道路にはオートリキシャが隙間なくそして雑然と敷き詰められたように並んで走っているのですが、事故を起こすこともなく混沌とした街だったことを覚えています。今ではインフラも整備されて道路事情も良くなっているのでしょうか。しかし、あの混沌とした街がコルカタなのかもしれません。利便性や効率を追い求めていくことばかりが大切なことではありませんよね。コルカタではマザーテレサの家を訪ねました。マザーテレサがしてこられた貧しい人々のための活動に賛同し、慕う人々が世界中からボランティア活動するために訪れていました。そんなマザーテレサの残された多くの言葉の中で、私がそうだよなと深く頷かせていただいた言葉に「この世の最大の不幸は、貧しさや病ではありません。だれからも自分は必要とされていない、と感じることです。」という言葉があります。最大の不幸は必要とされていないという事。あなたは居ても居なくてのどっちでもいいよ。あなたに何かを期待しているわけでもない。何も期待していない。居なくてもなんら支障はありませんという事であり。存在そののもを否定されているということに他なりません。必要とされていないと感じて生きるという事は、絶望的な生き方であり、死んでしまいたいと考えてしまう。つまり誰からも願われていない人生が最大の不幸であるということになろうか。私は日々四苦八苦しながら、愛しいものとは離れたくない、他者と争って手に入れたものは二度と離したくないという執著をし、憎くてたまらない人とは顔をあわすのも嫌になり、会いたくもないのに会わなければならないという苦しみの中を生きている。こんな私ですから日々の暮らしの中で思いっきり迷惑をかけ、不愉快な思いをさせ、怨み憎しみを周囲にまき散らかしているんだろうと思いますが、心底気付いていません。身にしみて反省などしておりません。お粗末な事です。申し訳ありません。いよいよ『煩悩具足の凡夫、火宅無常の世界は、よろづのこと、みなもってそらごとたはごと、まことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておはします（嘆異抄 後序）』仏さまの真実まことに目覚めてくれよの願いによって、嘘偽りしか持ち得ていない私の本当のすがたが露わにされて、煩悩を捨て去る事もできないこの私が、このままで許されて生かさせていただく所に、感謝と反省が生まれてくるのでしょう。「ありがとうございます」「申し訳ない事です」こんな私が、この世の最大の不幸を生み出し、作り出しているんですね。だれからも自分は必要とされていない環境を、私の都合という価値観だけでこの私が作り出していたんですね。そのことに気付くことができたのなら、少しでも世の中の不幸を少なくする努力をこの世においてしなければいけませんね。みんなが笑顔でいられるように。 なんまんだぶ
今月のことばについて
「今月のことば」の挿絵とタイトルは、株式会社探究社および株式会社法蔵館で発行している
「ほのぼのカレンダー」から引用させていただいております。
