先月21日に真宗大谷派の宗務総長名で、安全保障関連法案に対する宗派声明が発表されました。『日本国憲法の精神を遵守する政府を願う「正義と悪の対立を超えて」』と題して書かれたものです。お東さんは社会の問題に対して敏感に迅速に意思を表明されるイメージが私にはある。5月21日といえば新暦でいう親鸞聖人の降誕会(ごうたんえ・お生まれになられた日)ですが、そんなお祝いさせていただく日に、こんな声明を出さなければならなくなった現代を親鸞聖人はどのようにお感じになられるだろうか。今回の安保関連法案で想定される事態を保育所の日常に置き換えてみたいと思います。クラスの中で仲良しの友達がいじめらたので助けるんだ。友達を助けるのが友情というものである。いじめは許さない。いじめた奴は許さない。懲らしめてやる。懲らしめることは正義である。クラスが〈地球〉で、仲良しの友達を助ける子が〈アメリカ〉、いじめられた子はアメリカと同盟を結んだ〈何処かの国〉、アメリカと一緒になりいじめられた子を助ける仲間が〈日本〉であります。保育所ではその時クラス担任は双方の意見を中立な立場で聴きます。そしてクラス全員が仲良くできるようにはたらきかけます。ここで地球とクラスの違いは《同盟国》と《中立》を大切にしている事ではないでしょうか。いろんな同盟を結んで仲間づくりをする。仲間づくりとは聞こえがいいけれど、それはすなわち仲間外れを作っていることにほかなりません。最近の世界情勢ではウクライナとクリミア半島をめぐっての政治的な危機からロシアが孤立しそうであります。保育室の中で起こっている事と世界で起こっている事が本質では同じだという事が非常に興味深いところです。
さて、いま国会では安全保障法制を審議する平和安全特別委員会が開かれていますが、当初(5月)NHKのテレビ中継がされていませんでした。放送してほしい、どんな話し合いがなされているのか。次代を担う子供達にとって大変な問題だから、大人の私たちには重大な責任があるのだからありのままに見せてほしい。中継がない事が信じられなかった。
いま日本は世界報道の自由度ランキングで61位(対象180カ国)だそうです。日本に暮らす多くの人は報道の自由はきちんと守られていると思いますか。聞こえてくるニュースは歪曲される事もなく、真実をありのままに伝えられていると思いますか。もしかすると公平を欠いた内容になっていないか、自己都合に基づく偏りの表現にはなっていないだろうかと疑ってしますのは私だけではないでしょう。お釈迦さまは「すべての者は暴力におびえ、すべてのものは死をおそれる。己が身にひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。」(『ダンマパダ』)と説かれています。殺してはいけない。殺させてはいけない。殺し合いがあればそれを止めさせなければならい。日本が直接戦争の最前線に立たないといっても戦争とは人と人の殺し合いの場です。殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。と説かれた教えを聴くものは私にできる事で殺させないようにしなければ。私は仏法を味わい、仏法に生きたい。仏法を人生の指針として常に仏法に問いながら感動のある人生を歩みたい。仏教徒として法を灯火として自らを灯火として、歩んでいるだろうか。今月は法語から離れたかもしれませんがいまどうしてもいいたかったことです。
なんまんだぶ
今月のことばについて
「今月のことば」の挿絵とタイトルは、株式会社探究社および株式会社法蔵館で発行している
「ほのぼのカレンダー」から引用させていただいております。