2012年8月

12.08.jpgのサムネイル画像

 

 福島第一原発の事故以来原子力発電の安全性が問われ多くの原子力発電所が停止しています。そのため電気が足りない、電気が足りないと、国と電力会社は言っています。そこで国民には電気の消費を抑えてください。節電にご協力ください。と呼びかけ、原発が再開出来ない状況の中で電気の需要が増えるようなら計画的に地区割りをして交代で停電させる計画停電の段取りをしています。ここでちょっと不思議に思うことがあります。昨年は東京で計画停電が実際におこなわれましたが、今年東京電力は計画停電の話をしていないのはどうしてなのでしょうか。東京は火力発電などでまかなえて電気が足りているということなのでしょうか。さて私の住む北海道は計画停電への準備をしています。先日マンションにお住まいのご門徒のお宅にお参りに伺った時に、停電になった場合の大変さを教えていただきました。エレベーターは使えない。水も屋上の貯水タンクに汲上げが出来ないために使えない。玄関のインターホンも使えないので誰が来たのかもわからない。本当に計画停電になるんだろうかと心配をされていました。私はおそらく計画停電はしないでしょう。津軽海峡の海底送電線にトラブルが起きて火力発電所にトラブルが起きない限りは計画停電は実施しないんじゃないですかね。などと無責任な事を言ってしまう。実はお寺は計画停電の除外地域になっているんです。人間というのは他人事になるとなんとも無責任なものです。計画停電にはならないだろうけれど、なったとしてもうちは関係ないからと、じつに無責任極まりない奴です。電力の恩恵を被り電気が充分なだけ供給される文明社会とは快適で清潔で優雅なものだと考えてきました。しかし私たちが築き上げてきた文明社会とはいともたやすく崩れさるはかないものなのだと気付く事が出来ていなかったのではないでしょうか。

 これは私の友人が教えてくれ仏教説話です。鳥かごにヤマガラが飼われていました。ヤマガラたちは餌を充分にあたえられてよく肥えていましたが、一羽だけ餌を食べずやせ細っているヤマガラがいました。ほかの鳥たちがどうして餌を食べないんだとたずねるとカゴの外に出て大空を飛び回りたいんだと答えました。ここにいれば外敵に襲われる心配もないし、餌に不自由する事もないし、こんなに良いところはないじゃないか。カゴの外に出ようなんて愚かな考えはよした方がいいと言われてもやせたヤマガラは餌を食べませんでした。やがてやせたヤマガラはカゴの隙間からぬけ出て大空に飛び去って行ったそうです。この夏の計画停電で対応に追われる私たちの姿はカゴの中のヤマガラではないでしょうか。食べ物は充分すぎるほどあり、カゴとは見た目の安心安全を保障されているように見える社会の有り様そのものではないでしょうか。私たちは立派な文明社会を築き、生きてきたと思ってきましたが、実はお金と電気という鳥かごの中で、お金と電気に支配されながら抜け出そうにも抜け出せない生活をしてきていたのではないでしょうか。仏さまの目で、計画停電の問題を通して私を見たならば、何が大事で、何を大切にしなければいけないのか見えてくるでしょう。見えてきたならば本当の喜びも見えてくるようになるのでありましょう。これまで人間がつくってきたものを便利に利用してきたけれど、本当は便利さに縛られた生活をしていたんですね。

     なんまんだぶ

ホームへ
寺の概要
今月のことば
ブログ ブツブツ相念
お問合わせ・連絡

アーカイブ

年・月別アーカイブ